DJI Terra v5.3.0アップデート解説|公共測量対応・サーマル解析・3Dモデル生成の新機能を紹介
こんにちは、産業機担当の鈴木です。2026年7月23日に、ドローンで取得した写真やLiDARデータを解析し、3Dモデルや地図データを作成できる測量・点検向けソフトウェア DJI Terraが、v5.3.0へ大型アップデートされました。
今回のアップデートでは、公共測量に携わるユーザーにとって待望となる標準様式の出力対応をはじめ、サーマルデータの解析機能、ビデオからの3Dモデル生成、AIアシスタントなど、これまで以上に現場での使いやすさを重視したアップデートが数多く実装されています。
今回は、その中でも特に注目したい機能についてご紹介いたします。
目次
1. 公共測量向け標準様式の出力について
2. Thermal画像から温度付きオルソ画像を生成
3. ビデオファイルから3Dモデルを生成
4. AIアシスタント・実行記録機能を追加
5. プロジェクトキャッシュをワンクリックで削除
6. LAS 1.4 / LAZ 1.4形式の点群出力に対応
7. ローリングシャッター(RS)再構築に対応
8. 3DGSの品質がさらに向上
9. まとめ
1. 公共測量向け標準様式の出力について
LiDAR構築において、日本の公共測量 作業規定の準則に準拠した標準様式をDJI Terraが出力できる箇所のみ自動入力が可能となりました。
これまでDJI Terraで解析した後は、各種帳票を手作業で作成するケースも多くありましたが、今回のアップデートにより、DJI Terraで出力可能な項目については自動入力されるため、帳票作成にかかる時間を大幅に削減できます。
公共測量では提出書類の作成にも多くの工数が必要となるため、この改善は実務面で非常に大きなメリットと言えるでしょう。
※注意点:
今回のアップデートはこれまで出力できなかった項目が追加されたわけではありません。DJI Terraで出力できない項目については、従来どおり協議や別途資料の準備が必要となります。
また、すべてを自動入力するわけでは無く、ほとんどの様式には作業者が入力しなければならない部分も多く、DJI TERRAで入力できる部分のみ記入がされる仕組みとなっております。
そのため、様式全てに必要な箇所を追記の上、ご活用ください。
これまで通り、DJI独自のクオリティレポートも出力可能となっているため、詳細な解析結果を提出したい案件や社内管理資料としても活用できます。


2. Thermal画像が温度付きオルソ画像として生成可能に
サーマル点検を行うユーザーにとって非常に便利な新機能が追加されました。これまでは赤外線画像の温度情報は、Thermal画像を1枚ずつ確認する必要がありました。
v5.3.0では、取得したThermal画像から温度情報を保持したオルソ画像を生成できるようになりました。
オルソ画像上で温度を確認できるだけでなく、
・温度パレットの変更
・温度表示範囲(帯域)の変更
にも対応しています。設備点検や太陽光発電所、建物診断などでは、広範囲を一枚のオルソ画像として確認できるため、異常箇所の把握がこれまで以上に容易になります。
さらに便利になったのが読み込み方法です。これまではRGB画像とThermal画像を手動で仕分けしてから解析を行う必要がありました。今回からは撮影データをそのままDJI Terraへ読み込むだけで、自動的にRGB画像とThermal画像を判別し、それぞれのオルソ画像を生成してくれます。
前処理の手間がなくなったことで、解析までの作業効率が大きく向上しました。
[ 対応機種 ]
・DJI Zenmuse H30T
・DJI Zenmuse H20T
・DJI Zenmuse H20N
・DJI Matrice 4T/4TD
・DJI Mavic 3T
対象物に応じて細かくチューニングすることも可能です。
※Thermal画像を重ね合わせてオルソ画像にしているため、温度情報での精度はおおよその値となります。詳細解析を行う場合は、Thermal画像を元にご利用ください。
3. ビデオファイルから3Dモデルを生成
可視光プロジェクトでは、MP4・TS形式の動画ファイルを直接読み込めるようになりました。DJI Terraが動画から自動でフレームを抽出し、そのまま写真測量データとして利用できます。
これにより、
・動画しか撮影していなかった現場
・簡易的な現況記録
・点検映像の活用
など、これまで写真を撮り忘れてしまったケースでもモデル生成を試すことが可能になります。
もちろん、高精度なモデルを生成するためには、
・ブレの少ない飛行
・十分なオーバーラップ
・鮮明な映像
が必要となるため、写真測量と同様に飛行計画は重要になります。
[ 対応機種 ]
・DJI Mavic 3E/3T
・DJI Matrice 4E/4T/4D/4TD


4. AIアシスタントを搭載
DJI Terra内にAIアシスタントが追加されました。ソフトウェアの操作方法や各種設定について、その場で質問しながら作業を進められます。
また、後述する「実行記録」と組み合わせることで、エラーコードの原因や対処方法も簡単に確認できるようになっています。
初めてDJI Terraを利用する方だけでなく、トラブルシューティングの時間短縮にも期待できる機能です。


5. 実行記録でエラー原因をすぐ確認
解析処理中のステータス表示も強化されています。
画面左下の実行記録では、
・処理状況
・警告
・エラー
を一覧で確認できるようになりました。
エラー項目をクリックすると、
・エラーコード
・内容
・解決方法
まで表示されるため、従来よりも原因の特定が容易になっています。
解析途中で停止した際にも状況を把握しやすくなり、サポート対応時にも役立つ改善と言えます。

6. プロジェクトキャッシュをワンクリックで削除
解析データの管理機能も改善されています。DJI Terraでは解析時に一時キャッシュが大量に生成されるため、大規模案件を複数処理するとSSDやHDDの容量を圧迫するケースが少なくありません。
v5.3.0では、プロジェクト一覧から対象のプロジェクトを右クリックし、「キャッシュの削除」を選択するだけで、一時キャッシュを簡単に削除できるようになりました。
削除されるのは再生成可能な一時ファイルのみで、
・元画像
・点群データ
・オルソ画像
・メッシュ
・各種成果品
などの出力データには影響ありません。
解析済みプロジェクトのキャッシュを整理することで、ストレージ容量を効率よく管理できるようになります。
なお、一度キャッシュを削除したプロジェクトを再解析する場合は、中間データを再生成する必要があるため、その分だけ解析時間は長くなります。そのため、本機能は成果品の作成が完了し、今後再構築する予定のないプロジェクトで利用することをおすすめします。

7. 点群出力がLAS 1.4 / LAZ 1.4に対応
点群データの出力形式にもアップデートが入りました。これまで対応していたLAS 1.2 / LAZ 1.2に加え、新たにLAS 1.4 / LAZ 1.4での出力に対応しています。
LiDAR点群だけでなく、可視光点群から生成した点群データについても同様にLAS 1.4形式で出力できるようになり、LiDARタスクではデフォルトでLAS 1.4が選択されます。
さらに、出力形式は
・LAS 1.4
・LAZ 1.4
・LAS 1.2
・LAZ 1.2
から複数同時に選択することが可能となりました。例えば、社内ではLAS 1.4を使用しながら、納品先の指定に合わせてLAS 1.2も同時に出力するといった運用も可能です。
再構築は一度実行するだけで、選択したすべての形式がまとめて出力されるため、フォーマットごとに再処理を行う必要がありません。
また、品質レポートにも実際に出力した形式が記載されるため、成果品管理もしやすくなっています。
LiDARデータをさまざまなソフトウェアで利用するケースが増えている現在、互換性の高い出力環境が整ったことは、多くのユーザーにとってメリットの大きいアップデートと言えるでしょう。

8. ローリングシャッター最適化に対応
最後に紹介するのがローリングシャッター(RS)画像への対応です。
RSカメラ特有のゼリー現象を補正しながら、
・航空三角測量
・オルソ画像
・3Dモデル
を高精度に生成できるようになりました。RS画像とGS画像を混在して読み込むことも可能となっており、対応機種の運用幅がさらに広がっています。
[ 対応機種 ]
・DJI Matrice 4T
・DJI Mavic 3TD
・DJI Mavic 4TD
・DJI Matrice 4E(メカニカルシャッターOFF時)

※RS ファイルの最適化を有効にすると再構築結果が向上しますが、それに応じて再構築効率が低下します。
9. ガウススプラッティング(3DGS)の品質がさらに向上
3DGSの再構成アルゴリズムもアップデートされ、より高品質な3Dモデルを生成できるようになりました。特に今回改善されたのは、水面表現と浮遊ノイズの除去性能です。
水面領域のレンダリング品質が向上
これまで水面を含むシーンでは、反射の影響などによりノイズや色ムラが発生するケースがありました。v5.3.0では、水面領域の再構成アルゴリズムが最適化され、水面のレンダリング品質が向上しています。
これにより、
・水面周辺のノイズを低減
・色ムラ(カラー パッチ スティッチング)の軽減
・より自然で滑らかな水面表現
が実現され、河川や湖沼、港湾など水域を含む現場でも、視認性の高い3DGSモデルを生成できるようになりました。

浮遊物(フローティングノイズ)の除去性能を改善
もう一つの改善点が、3DGSで発生する浮遊ノイズの低減です。従来は建物の屋上付近や空中、建物の壁面周辺などに、小さな点や破片のようなアーティファクトが発生することがありました。
今回のアップデートでは、この浮遊物の除去性能が向上し、
・建物上部
・空の領域
・ファサード周辺
に発生していた不要な浮遊物を大幅に低減しています。これにより、モデル全体がよりクリーンに仕上がり、デジタルツインやプレゼンテーション用途でも視認性の高い3DGSデータを作成できるようになりました。

10. まとめ
今回のDJI Terra v5.3.0を実際にアップデート内容まで確認して感じたのは、新しい機能を増やすことよりも、「現場で本当に使いやすいソフトウェア」に進化させることを重視したアップデートだということです。
特に印象的だったのは、公共測量への対応強化です。標準様式の出力に対応したことで、解析後の帳票作成にかかる手間が軽減され、成果品作成までを含めたワークフローがよりスムーズになりました。
もちろん、すべての帳票が自動化されるわけではありませんが、「DJI Terraだけでここまでできるようになった」という進化は、公共測量に携わるユーザーほど実感できるポイントではないでしょうか。
一方で、設備点検やインフラ点検分野においても、実用性を高める機能が追加されました。Thermal画像から温度付きオルソ画像を生成できるようになったことや、動画データをそのまま再構成に利用できるようになったことで、現場で取得したデータをより効率よく活用できる環境が整ってきました。
撮影から解析までの流れがシンプルになり、「ひと手間」が減ったことは、日々運用するユーザーにとって大きなメリットになると感じます。
また、3DGSの品質向上やLAS 1.4への対応、AIアシスタントの追加、キャッシュ管理など、一つひとつは小さな改善に見えるかもしれません。しかし、こうした細かなアップデートの積み重ねこそが、日常業務のストレスを減らし、ソフトウェア全体の完成度を高めています。実際に使い続けるほど、「以前より快適になった」と感じられるアップデートではないでしょうか。
個人的に今回のアップデートで特に評価しているのは、新機能を追加するだけではなく、これまでユーザーから要望の多かった部分や、実務で不便を感じやすかったポイントを着実に改善してきたことです。派手さはありませんが、だからこそ現場では効果を実感しやすく、毎日の業務効率向上につながるアップデートだと思います。
DJI Terraは、単なる点群処理ソフトではなく、公共測量やインフラ点検、設備管理、デジタルツインまで幅広い用途を支える解析プラットフォームへと着実に進化を続けています。今回ご紹介した新機能以外にも、DJI Terraには業務を効率化する便利な機能が数多く搭載されています。ぜひ最新バージョンを導入し、進化したDJI Terraを実際の現場でご体感ください。

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